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リヴァイさんはここにいる





 エレン・イェーガー。享年十といくつ……二十歳を迎える前に死んだのは確かだ。シガンシナ生まれ。第百四期訓練兵団卒。調査兵団所属。巨人になれる人間。……人類の希望、と呼ばれていたこともある。
 もしそのあだ名が本当にオレを指すものだったなら、あんなに簡単に裏切られて死ぬこともなかっただろう。巨人を一匹残らず駆逐する。オレの夢はあと一歩のところで届かず、オレのために犠牲になった多くの仲間たちのことを未練に思いながら、オレは死んだ。
 気が付くと、そこは門の前だった。門の前と、門を越えた向こう側に、門番がひとりずついた。あの門の中に一歩でも入れば、もう戻ってこれないのだろう。
 そこは雲の上だった。雲の上に立つ門。夢物語でももう少しリアリティをもって語られるだろうに、そんな嘘みたいなここがあの世の、正しくはその入り口なのだろう。
 雲の下では、エレンの生きた世界が見下ろせる。目を凝らすと、生者の彼らの顔まで見えるから不思議だ。
「本当に見たいと思うものなら見せてくれるよ」
 門番が言った。エレンは何も言っていないのに、心の声まで聞こえているみたいだ。
「そうだね」
 エレンが残してきた仲間たちを見るのは辛かった。彼らはエレンを信じて戦っていた。やがてエレンの死を知るだろう。そしてエレンの遺志を継いで、あの残酷な世界で戦い続ける。信じるに足る、そんな彼らを好ましいと思った。生前では、意地が邪魔して素直になれなかった彼らへの気持ち。こんなにあっさりと、ぽろっと出てしまうなんて。死んで気が緩んだのだろうか。
「肉体のくびきから解放されたおかげだね」
「お前、いちいちうるさいな。少しは黙ってろよ」
「死んでも治らない本人の気性はそのままだけどね」
 エレンはしばらく仲間たちのことを見ていたが、やがて満足した。生者の彼らに、先に死んだ自分ができることなんてなにもないのだ。もう逝こう。目を逸らしたその先に、エレンは信じがたいものを見た。
「んん?」
 それは、先に死んだはずのリヴァイ兵長だった。
「どうして……」
 あの人を失った日のことを覚えている。厳しくも優しく、分かりづらいけれどいつもエレンを見守ってくれた人。あの人の言葉のおかげで、戦うことのできたときもある。あの人が見ていると思ったから、進めた道もある。リヴァイ兵長を失った調査兵団の衝撃は計り知れず、エレンもまた打ちのめされた。人類最強の死。もうこれ以上は無理なのでは、やはり人類は巨人に供されるだけの存在なのかと、誰もが諦念を禁じ得なかった。
 だがエレンはそれでも前に進んだ。不思議と、リヴァイ兵長はまだオレのことを見ていてくれている気がした。あの鋭い目。じっとエレンを見つめるまなざし。アレに晒されると、エレンは背筋の伸びる思いがする。こんなところで、立ち止まってはいられない。諦めては。あの人は、エレンを監視するという名目でずっとその傍にいてくれた。だからだろうか、しだいにその視線の温度が変わっていったことを、エレンは肌で感じ取ることができた。人類最強の英雄に祭り上げられたリヴァイの、その希望にエレンはなったのだ。あの人はオレを見ていた。オレに希望を見ていた。そのまなざしが縋っていた! この世界で生きるために、彼は酔っ払いのような熱のあがった視線をオレに向けたのだ。その目線が、彼の亡き後もまだ皮膚の上に残っている。張り付いている。その視線に応えたいと思っていた。もう兵長はいないけれど、この世界で巨人を滅ぼして。彼の熱望した希望に。
 そう誓った。あの人の遺体のあった路地で。
 だが、死はあっけなく訪れる。それは人類最強と言われたリヴァイにも、人類の希望と称されたエレンにも、平等に。結局オレは希望にはなりえなかった。調査兵団のエレン・イェーガー。夢半ばで背後からの攻撃に不意を打たれて死んでしまった。
 リヴァイ兵長が亡くなったのは、オレが死ぬよりもだいぶ前のことだ。オレが死んで雲の上にいるのに、どうしてあの人はいまだ地上にいるのだろうか。
「知りたいか?」
 お喋りな門番が、こんなときに限ってもったいぶる。エレンはおのれの不機嫌を抑えることができなかった。
「どうしてリヴァイ兵長があっちにいるんだ!? あの人はオレより前に亡くなったのに!」
「まだ未練のある人間は成仏できないんだよ」
「未練……? じょうぶつ?」
「なにかこの世に心残りがあるんだろうねぇ。成仏っていうのはあの門を越えること。魂がまっさらになって、生まれ変わる」
 君ももう逝ったほうが良いよ。君には未練ももうないんだろ。
 門番が柔らかにそう告げた。
 エレンの野望は、巨人を滅ぼすことだった。わけも分からず巨人の力を手に入れて、人類の希望だと畏怖された。そのなかでもエレンを信じて、エレンのために命を賭して逝っていった仲間たち。しだいに巨人根絶は、彼らの命に報いるための唯一の贖罪となった。
 しかしそれすら、満足に達成できないままエレンは死に、自分が不甲斐ないばかりで仲間たちの犠牲が無駄になってしまった。なんと言って詫びればいいのだろう。死んでいった仲間に。あの地獄に残してしまった仲間に。それが死ぬ間際のエレンの心残りだった。
 雲の上から残した仲間を見る。エレンの信じた、いまも信じている彼らを。あれだけ強く心を縛り付けていた未練が、綺麗になくなってしまった。きっと、先に逝った先輩たちもそうだったのだろう。彼らの思いをエレンは継ぎ、またその思いを彼らに懸ける。もうそれしかできないのだ。死者の自分には。だからこそこんなに心は穏やかだった。
 未練もないと言った門番の言葉は正しい。エレンにはもう思い残すことなどない。ただ、先ほどまでの晴れやかさと違い、いまは一点の気がかりができてしまった。
 リヴァイ兵長、あなたの未練とはなんなのですか?
 エレンはこのまま成仏せず、しばらくリヴァイの様子を見ようと決意した。ゾッとするほどの険しい顔が、エレンには心配でたまらなかった。
 そうしてすぐに、ソレを見ることになる。
「あ……」
 一夜で、リヴァイはシガンシナを滅ぼした。エレンが死んで、すぐのことだ。リヴァイ兵長は、本当にエレンのすぐそばにいたのだ。自分が死んでからも。
「あーあ。あれは自分で自分を縛っちゃったね。きっとすぐにここに来ることはできないよ」
 門番が溜め息をついた。
「いるんだよねぇ。死んだ後も自分を許せなくて、ここまで辿りつけない人」
「リヴァイ兵長は、自分を……?」
「みんながみんな、死んでその生のくびきから解放されるわけじゃないってことさ」
 いったいリヴァイ兵長がなにを許せないというのだろう。ただ憧れ、その強さに圧倒され、守られていたばかりのエレンには想像もつかない。
「どうすれば……」
 兵長は自分を許すことができるのか。死んでなおまだ苦しみの続く彼に、エレンは何ができるだろう。ずっと彼に見守られていただけの自分に。
「何もできないよ。信じてあげることだけしか」
 ならば、エレンはここで待っていよう。彼が自分を許すことのできるその日まで。



 時は流れ、移ろい、エレンが信じて戦った仲間たちも、もうとうに死んでしまった。シガンシナの呪いは土地だけを滅ぼし、彼らに影響はなかったけれど、彼らにも寿命があったからだ。しかし彼らが地上にいないということではない。無事に成仏できた彼らは、魂が更新され、また新たな生として、地上にいる。いまだ成仏できていないのはリヴァイとエレンのふたりだけだ。
 魂がまっさらになるとは、あの時代に生きた記憶を忘れることではない。ただ保存されてもう開かれないように鍵をかけてしまうのだと門番は言った。もう目に見ることはできないけれど、それを意識して認めることはできないけれど、それでも存在するのは確かだ。
 何もなかったことにはならない。ただ意識できないだけで、大切なものは実際にそこにある。そうやって生きていくのだ、ずっと、ずっと。
 エレンが残したものを、彼らは忘れてしまったけど、失くしたわけではない。そうと知らないだけで、いまも持ってくれている。そうして新たな生を生きる仲間たちが、いまではエレンの誇りだ。
 あとは、リヴァイ兵長だけなのにな。
 彼の自責の念は、そのまま彼を現世に縛り付ける鎖になった。いまはただ時の流れに身を任せているばかりだけれど、エレンが死んだ直後のリヴァイ兵長は、直視するのが辛かった。
 リヴァイ兵長が死者の力を行使するたびに、さらに自分を許すことができなくなっているようだった。最初は自暴自棄だったのかもしれない。負の力は負の連鎖を呼び、彼は自らが苦しむために傷つけ、人を傷つけたから苦しんだ。
 もうリヴァイ兵長が、成仏することはできないのかもしれない。彼はきっと、自らを許すことなどないのだろう。
 雲の上から見つめるばかりのエレンは、そう思った。
「相も変わらずの日々……ずっと立ってるだけの門番の仕事……暇だね。ラジオつけていい?」
 真剣にリヴァイのことで悩んでいるのに、門番はのんきなものだ。こいつのマイペースにも長いときをかけて慣れてしまった。時折無性にイラッとくるが。
「勝手にしろよ」
「お言葉に甘えて」
 門番はラジオのスイッチを押した。ノイズ音。
「……きょ、もこのじか……やって、ました。……の『あの世』ラジ、です」
「電波悪いなあ」
 雲の上だからだろ。エレンはラジオの周波数を合わせようと奮闘する門番を呆れた目で見やる。
「……そ、ではさっそくお便りを紹介しましょう。ラジオネーム……さん。……さん、こんばんは。はいこんばんは。いつも楽しくラジオを聞いています。……さん、先日は私の悩みを聞いてくださりありがとうございました! 私は親の言うことではなく、自分のやりたいことをしようと思います。だって私の人生なのだから。それでもやっぱり、悩んでいます。……さん、力を貸してください。いつも私を支えてくれた友達が、いまも進路に悩んでいます。友達の力になりたいのに、友達の進路のことだから、私はなにもできないままです。どうしたら……さんが私に勇気をくれたように、私は友人になにかをしてやれるでしょうか。ラジオネーム……さん、お便りありがとう。そうだね。見ているだけなのは辛いよね。僕にもその気持ちがよく分かるよ。僕も、幼馴染には助けてもらってばかりだったんだ。それがコンプレックスでね。でも、僕は行動したよ。彼らには彼らの生き方があったけれど、僕は彼らの人生を背負う覚悟で彼らのためにやったんだ。君も。その友達の一生を見る覚悟があるのなら、友達のために行動してもいいんじゃない? 健闘を祈っているよ」
 軽快な音楽が響く。ラジオはそれきり沈黙した。
「見ているだけじゃ、だめなのか……」
「彼の回答も極端だとは思うけどね」
 門番の声はもう聞こえなかった。雲の縁に立つ。風がごうごうと鳴っていた。
「門を、越えなくていいの?」
「門を越えるのは、この気持ちに鍵をかけてもいいと思ったときだ。いまじゃない」
「そっか、いってらっしゃい。エレン、またね」
 門番は手を振る。饒舌なこっち側の門番。一度もあっち側の門番とは話したことはなかったなと、そのとき気付いた。
「こっちとあっちは別世界だからね。今度あっちに行くときに、挨拶してやってよ」
 きっとあいつも喜ぶから。
 門番はそう言って笑った。エレンは、一歩踏み出した。雲と空の境目を。
 落ちていく。エレンの体は光となってやがて小さく瞬くと、あたたかい微睡みの中にいた。それから十月十日ののち、三月三十日、再びこの世に生を受けた。あの時代の記憶を、そのまま持って。



 やっと出会えたリヴァイ兵長は、自分の名前も忘れてしまっていた。もう自分が誰かなんて、覚えていないのだろう。それなのに自分の罪ばかり数えている。自罰意識が彼の魂を縛っている。その姿を目の当たりにしたとき、エレンは目を逸らした。あまりにも耐えがたい。たまらず彼から逃げてしまった。それはもはや恐怖だった。どうして彼はここまで……。戸惑った。生前のリヴァイ兵長の面影はその苦悩で覆い隠され、自分が傷つくために誰かを傷つける愚かしさに、エレンは何度もどうしてと問いかけたかった。あなたはそんな人じゃなかったはずなのに。
 しかしエレンには言えなかった。エレンがエレンなのだということも。知らないフリをして、おばけを憎んでいるフリをして接した。自分の名前を忘れてしまったリヴァイに、エレンの気持ちを伝えたところでなんの意味もない。
 彼をそこまで陥れたのは、自分のせいなのではないか。リヴァイの絡み付くような視線に晒されて、エレンはそんな思いが拭えなくなった。あんなに今とかつての兵長は違うのに、そのまなざしの熱は同じなのだと分かってしまった。彼の熱に鳥肌が立つ。
 いまもまだ、ずっと変わらず、リヴァイ兵長はエレンに希望を見ている。縋らずにはいられないように、救いを求めているように、酒に溺れた人間のするような潤んだ目に、エレンが映っている。
 オレが! リヴァイ兵長を! この地に留めつづけたのか。彼の未練とは、まさしくオレのことだったのではないか。
 腹立たしかった。勝手だ。リヴァイ兵長は身勝手だ。オレはあなたに憧れていた。尊敬していた。人類最強という重荷を背負ってもなお強いあなただからこそ、そんなあなたの希望になれるのは嬉しかった。その期待に応えたいと思った。だけどもし、あなたの希望が、そのまま絶望に変わるものだと知っていたら。悠久のときを苦しめる原因になるのだと分かっていたら。そんな希望になりたくなかったと、泣きわめいていただろう。
 リヴァイ兵長。あの時代、オレは自分のために戦っていた。オレの夢だから、オレは絶対諦めたりしたくなかった。もう引き返せないと知っていた。オレが信じた仲間たちが、オレを信じて死んでいっても。彼らの最期に残した思いを、裏切ることなんてできなかった。オレは自分のためだけに戦えなくなった。どんなに痛くても苦しくても、仲間の血が流れてもその臓腑が巨人に食いちぎられても、オレが戦い続けたのは、それでもこの残酷な世界にまったくの救いがないわけではないと、思いたかったからだ。
 リヴァイ兵長。あなたは? あなたはその救いを、オレに見たのか。
 ならオレがあなた成仏させてみせる。あなたが自分を許せるように、オレがしてみせるから。
 あなたの望みはなんなのですか。
「エレン、お前と一緒に死ぬことだ」
 オレは凍りついた。





 食塩でお茶を濁していた感は否めないけれど、いまでもどうしてリヴァイ兵長がオレの精液をひっかぶって成仏したのかはよく分かっていない。そのことに関しては、いつか自分が成仏して門を越えるときに、あのお喋りな門番にも聞いてみようと思う。まあだいぶ先の話になるだろうが。
 いま専らのエレンの関心は、十五も年下の子どもに貞操を奪われてしまうことである。
 話が急すぎるのは、重々承知なうえだ。まず、発端であるリヴァイ・アッカーマンが急ぎすぎた話をしないといけないかもしれない。
 あのとき、光となって消えたリヴァイ兵長は、迷わず雲の上の門まで行きついたようだ。そこであのお喋りが余計なことをリヴァイ兵長に伝え、彼はせっかく門前まで来れたというのに、門を越えることなく再び下界へダイブした。雲の上の滞在時間が違うだけで、エレンとやったことと一緒である。若干のタイムラグを含めて十月十日、リヴァイさんは冬に生まれた。そうしてものごころつく頃にはオレを探して、二十歳を迎えたオレをついに見つけ出したわけだ。それから八年。オレはれっきとしたアラサ―、対するリヴァイさんはピチピチの十三歳。……先日めでたく精通を迎えたばかり。オレもそのぐらいの年で精通したと思い返せば懐かしい。そしてそのあとの居たたまれない記憶も。
 若気の至りという言葉もあるけれど、あんな浅はかな考えに行きついてほしくなかったと、いまのオレなら思う。まあ、間接的にであれ直接的にであれ、オレの精通、そしてオナニー事件がリヴァイ兵長の成仏に関わっているのは確かなのだし、いまさらどうこう言ってもしょうがないのだ。
 だが、精通を迎えたリヴァイさんに改めて体を触られてしまうことになるとは、夢にも思っていなかった。
「触ってくれって、お前が言ったんだ。そうだろ、エレン?」
 中学生の制服を脱ぎながら、リヴァイさんはベッドに乗り上げた。ついこの前まで体がまだ精液も作れないガキだったくせに、目の前のリヴァイさんは大人の雄の顔をしている。このリヴァイさんにはリヴァイ兵長の記憶も、悪霊となっていたときの記憶もある。あのリヴァイ兵長なんだ、あの男なんだと思うと、その手に触れられる前に体は勝手に火照っていた。
 あの時代、オレがリヴァイ兵長に抱いていた思いは、門番にまだ鍵をかけたくないと言った気持ちは、リヴァイ兵長への恋心ではなかったはずだ。でも、リヴァイさんの一生を背負うと決めた。その覚悟で生まれ変わった。オレがこの世に生まれたのは、リヴァイさんを愛するためだったのかもしれない。
「うん……。触って。リヴァイさんの手で」
 血の通ったその手で。生きている人間の体温で。
 待ち望んでいたのは、この抱擁だったのだ。今なら分かる。



 尻穴を潤滑剤とリヴァイさんの指でいっぱいにして、エレンは喘いでいた。
「あっ! ハンっ、やぁ、そこぉ……!」
「あいかわらずエッロイ声しやがって」
 まだ声変り途中のリヴァイさんの声は、興奮でいつもより擦れていた。器用な指先が、エレンの肉壁をぐぽぐぽと圧迫する。
「あァん……! リヴァイさ、きもちひっ、あん!」
 この世に生を受けたリヴァイさんの体は、どんなに昔の記憶があったとしても童貞なわけで、その巧みな指使いをエレンは労った。
「じょうず……、ね、リヴァイさん、オレのおっぱいもっ、きもちよくして」
 シーツに擦り付けていた乳首は既に立ち上がって、ジンジンと痛かった。仰向けだったのを振り返り、リヴァイを誘うように手を広げる。
「ひゃんっ、リヴァイぃ……」
 犬のように短い息遣いが乳輪に触れる。ぷつぷつと鳥肌が立つ。乳輪ごと、リヴァイにねっとりと口に含まれて、エレンの嬌声は更に高くなっていく。
「おっぱい、好きだな。エレン」
「うん! しゅきぃ、リヴァイさ、に、おっぱい吸われるの……らいしゅき!」
「おっぱいだけか?」
 乳首を甘噛みされて、エレンの腰は跳ねた。びゅくびゅくと精液が飛び散る。リヴァイのへその穴に、エレンの精液がかかった。
「んあああ! おっぱいだけじゃな、……お、しりもっ、リヴァイさん、エレンのおひりもかわいがって」
 リヴァイの指を失ってもの欲しげに蠢くアナルを、エレンは自分で広げて見せた。リヴァイが唾を飲みこむ音が部屋に響く。童貞には刺激が強かったかもしれない。
 真っ赤な顔をして興奮の息を吐くリヴァイが、力強くエレンの足を掴んだ。大きく開かれる。
「あっ」
「いいんだな……?」
 ここでダメだと言ってもはなから止める気もない顔をして、リヴァイはエレンの目を真正面から見つめた。見られている。エレンは必死に頷く。
「きて、いっぱい触って」
 さんざん濡らして、解したそこに、リヴァイが押し入ってくる。エレンは息も絶え絶えにその熱量を受け入れた。



 夕暮れの日差しが、カーテン越しにエレンの肌を温めていた。目を開けると、リヴァイのベッドで寝ていた。ぐしょぐしょに濡れていた体は拭き清められ、乾いた肌に清潔なシーツが気持ちいい。
「リヴァイさん……?」
 ひどく嗄れた声だった。腰は重く、股関節も痛い。当然ながら、尻の痛みは体中のどことも比べようもない。
 それでも、エレンは満ち足りていた。あとはここに、このベッドのうえに、自分ひとりだけでなくリヴァイもいれば言うことないのだが……。
「リヴァイさん? どこですか?」
「……エレン」
 盆を持ったリヴァイが、部屋に入ってくる。盆の上には飲み物とフルーツの入った皿が置かれている。芳しい香り。桃だ。
「俺はここだ。エレン」
 机の上に盆を置き、リヴァイはエレンのいるベッドの縁に座った。エレンはその頬に触れる。まだ幼い、まるみの残る頬。これから、どんどん男らしくなっていくだろう。そしてその成長を、エレンは見守っていけるのだ。リヴァイが、エレンのそばにいる限り。



 リヴァイさんはここにいる。オレの隣に。








2016/9/3
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