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捧げたはずの心臓の音が聞こえる





校舎を出ると、リヴァイが校門近くの木陰で佇んでいた。今日は珍しく帰りの時間が一緒なので、リヴァイの家へお呼ばれしているのだ。一緒に帰る約束をしていた。どうやら用事はエレンより先に終わっていたらしい。エレンを待ってくれているリヴァイに慌てて駆け寄り声をかける。リヴァイは大学でも有名人なので、エレンを待っている間、遠巻きにたくさんの視線に晒されていたようだ。そういうのがウザったくて嫌いなリヴァイは、不機嫌を隠そうともしない。しかしエレンが声をかけると、なるほど近しい人にしか分からない程度でとても微妙なものだが、確かに機嫌はそこまで悪くないことが分かる。
歩くのが早いリヴァイを追いかけながら、エレンは話しかけた。
「今日は随分機嫌が良かったみたいですね」
リヴァイはチラリとエレンを流し見て、しかしすぐに視線を前に向けた。
「ちげぇ。機嫌が良くなるのはこれからだ。帰ったらセックスすんぞ」
とても夕方人ごみで賑わう往来で聞くべき単語じゃなかった。今日はなんだかそんなのばっかりだな。
無事誤解が解けて悲願を達成させたリヴァイさんは、セックスにすっかりご執心だ。いや、ただ単に我慢をしなくなっただけかもしれない。どうやらエレンは四か月も彼女に我慢を強いていたみたいなので。
しかしセックスした次の日、文字通り足腰立たなくなってしまったエレンにしては、明日も早い時間に講義のある今日、素直に頷くことはできない。リヴァイとの行為がスタンダートに一回で終わらないことは、早々にエレンが学んだことだった。
「レンタルショップ行って映画借りて見ましょうよ。俺、リヴァイさんとイチャイチャしたいです。後ろから抱きしめてぎゅっとしたい」
近くを通った学生が、往来での睦言まがいの告白にぎょっとしたが、エレンはリヴァイを見つめていたので勿論気が付かない。
ふむ、と顎に手を当てて考慮しているリヴァイは、代替案に心惹かれるものがあったらしい。
セックス不和で傷つけてしまったリヴァイの心は、残念ながらまだ癒えていない。相変わらずリヴァイはエレンの愛に飢えたままだ。そしてそれを貪欲に求めてくる。セックスをとっても、ハグをとってもそれがリヴァイに愛を与える行為であることに変わりはない。だからリヴァイは思案しているのだろう。
「セックスしないのなら、一緒にお風呂にも入ってあげます」
リヴァイの眉間に皺が寄る。どうやらリヴァイにとっては大分難問のようだ。
決して狭くない浴槽に、身を寄せ合うように身体をぴったりとくっつけて、後ろからぎゅっとされながら湯船に浸かるひとときが、リヴァイにとって至福の時間だ。
リヴァイは風呂場でもソファでもベッドでも、エレンに抱きしめられる事を殊更好む。エレンの心臓の音が聞こえるのが堪らないらしい。
セックスかぎゅっとされるか、真剣に思い悩むリヴァイの横顔を見て、エレンはふっと笑う。
リヴァイさんはとても可憐だ。



ああ! 俺のかわいい彼女リヴァイさん!














2013/6/29
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